2012年8月アーカイブ

デュオとしてのツアーのしめくくりは、ギャラリー&カフェ亜露麻さんにて。京都
からはじまり、東京へ、全7公演のラストコンサートとなりました。亜露麻さんでは
もう何回もお世話になっています。私が大学卒業したての頃も、一度クラシック
専攻の友人たちと一緒にコンサートをしたこともありました。また、NY在住の、
ジェームズさん(尺八)とも。玉木とは、2009年の七夕コンサートを含めて、これ
で、4回目となります。亜露麻さんでは、美味しい珈琲と、素敵な空間に、毎回
私たち自身も癒され、かつ、お客様との距離が非常に身近に感じられるコンサート
をさせて頂いています。

玉木も自身のブログで今年の夏のプログラムを1曲ずつ、振り返っていましたが、
私も遅まきながら、それにならってツレヅレと書いてみたいと思います。
コンサートですと、あんまり喋ってしまうと、「We want show! (はよ、演奏せい〜)」
という気持ちになってしまいますよネ。


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○風の歌(沢井忠夫作曲)
この曲は、よく練習初めに弾いていました。今住んでいるアメリカの家は、窓が
大きくて、木漏れ日がよく入ってきます。葉ずれの様子を観察しながら、晴れの
日も、嵐の日も弾いていました。ある時、もの凄い暴風雨の日があって、外から
「バキッ」という物々しい音。庭の木が折れて、窓に降ってきました。アメリカの風
はパワフルだなぁ、としみじみと思ったのでした。この曲は、千変万化の"風"の
様を本当に見事に描いているな、と思います。
(写真は、京都の修学院離宮にて。高台に吹く風が気持ちよかったこと)


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○四季の友(久村検校作曲)
「花鳥風月」シリーズを初めてから、ひとつ「組歌」を選ぶようにしていますが、
それは、「絶対こうしよう」と思ったからではなく、何とはなしに自然にそうなって
きております。「組歌」というジャンルは、本当にシンプルで、恐らく私の拙い演奏
では眠気を催されたお客様もいらっしゃるのでは...と懸念されているのですが、
それというのも、時計の無い時代の"ゆとり感"というのが、この組歌という不思議な
ジャンルの形成に一役買っているのでは?と秘かに思う所があります。"花鳥風月"
という言葉は、日本の四季の多彩さを表していますが、組歌も、そのままの内容
でして、ただ型通りに演奏するのではなく、「空間」を描ければ...といつも願って
います。でも、そんな気持ちとは裏腹に、弾き始めるときは、極度の緊張に「何で
この選曲にしたのだ〜、自分」と思ったりして、高望みの自分を痛感しています。
今は、どんな方も日々忙しくて、花をゆっくり眺める時間も愛でる時間も持ちにくい
のですが、組歌はそんな心を、呼び覚ましてくれるものだと思います。
(写真は、明日館にてリハーサル中)


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○無伴奏チェロの為の「落葉」(イモージェン・ホルスト作曲)
余談ですが、私はホルストの「惑星」が大好きでして、特に「木星」はよくCDを
かけて聴いていました。そのホルストにお嬢さんがいて、しかも作曲家だった、
とは全く知りませんでしたが、今回はとても素敵な作品に出会わせて頂きました。
チェロという楽器は、それこそ轟々(ごうごう)且つ、重低音でじ〜ん......、という
イメージがありますが、この曲は、とても繊細な、少しガラス細工にも似た儚さが
あって、大きな空間で演奏するのは、ともすればチェロ特有のイメージに結び
つかない為に「あれ?」となってしまうと思うのですが、玉木はその繊細ぶり(?)を
よく研究していたのでは...と思います。楽器の利点をやや抑えて、違う魅力を
引き出すのって難しいですよね...。エラいな〜、と思いました。
(写真は亜露麻にて、リハーサル中)


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○南風にのって(マーティン・リーガン作曲)
よく作曲家との良い関係が、良い作品を生み出す...と言いますが、お世辞でも、
公の場だからでも、何でも無く、マーティンと私たちは本当に良いおつきあいを
させて頂いています。私たちの為に書かれた作品は、やはり、とても大きな意味
合いがあります。今回は、5月のアメリカでの桜まつりが世界初演となりましたが、
実際のところ、初演前の3日間でなんとか形にしました。色々と改善も繰り返して、
日本でも各地で演奏させて頂きましたが、季節柄ともよく合っていたのでは...と
思います。特に、京都ではマーティンもやってきてくれ、終演後、興奮しながら、
「(テンポが)早いですね〜」と舞台まで握手しに来てくれました。「そうか、早
過ぎたか...」と更にテンポ設定を考慮して、再三チャレンジしたのでした。
もうすでに、来年の「月」をテーマとした新曲も委嘱済み。今度は、たっぷり時間を
かけ、日本に持って帰る心積もりでおります。来年も是非楽しみにしていて下さい。
(写真は自由学園にてリハーサル中)

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○奔手(三木稔作曲)
たまに聞かれる質問で、「箏と三味線、どちらが好きですか?」とあるのですが、
正直なところ、「どちらも好き」というのが本音です。どちらかと言うと、三味線の
方が、時間も気にせずに練習し続けられます。本当は、三味線ばかりのプログラム
も組んでみたいくらい、なのですが、時間の都合上、そうもいかないので、この
シリーズでは特に、と思うものを選曲させて頂いています。「奔手」は、これまでに
数多くの名人の方々によって演奏されてきました。大変、難易度の高い曲なので
"奔放な手"、どころか、"放漫な手"に陥ってしまう危険性があり、三木先生も尋常
でない曲を遺されていったなぁ、と感じ入るばかりです。私は、三木先生の思い出
と言えば、数少ないのですが、いつか箏曲コンクールの審査員として東久留米に
来られていた時のコメントが印象的です。「中国の古箏の演奏者の技術力はとん
でもない程です。日本での箏曲コンクールは古典と現代ものを分けるべき。」ー
明らかに、日本の外でも広く活躍されてきた方なのだなぁ、とそのコメントを伺った
時に思いました。しかし、先生の作曲されるものは、一方で、古典的な感性に依って
いらっしゃる点が無視できません。奔手の中でも、古曲の河東節で使われる手法が
非常に効果的に取り込まれていて、驚きました。その手法として取り込まれたのか、
否かは、謎ですが...そうした音色を感覚的に取り込まれた、というところが三木先生
ならでは、と思います。細かいことはさておき、この夏の演奏を通じて、この曲が本当
に好きなりました。(写真は亜露麻にて)


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○弦歌三章(石黒晶・いしぐろさやか)作曲
今回のツアーで、嬉しかったことの1つに、石黒先生と直接お会い出来た、という事
があります。先生はお忙しい中を、京都の興聖寺でのコンサートにお越し下さいました。
しかも、終演後の、うちあげまで参加して頂いて...今でも、お優しい笑顔が思い出さ
れます。職業柄、いろんな作曲家の方にお会いしてきましたが、石黒先生は本当に
飾らないお人柄で、温かな方でした。玉木が演奏したこの作品は、私もずっと日々
聴いていましたが、楽章ごとのタイトルも素敵(太原へ、モリン・フール"馬頭琴"、
オスティナート)で、私自身もとても好きな曲です。特に、「太原へ」は疾走する馬の
群れが目に浮かぶようです。各章のメリハリも、かっこよく、三味線や箏でもこんな
曲ないかしら...と羨ましくなるような素晴らしい作品でした。(写真は明日館にて)


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○天の城を知っている(ノルウェー古謡/玉木光・陽子編曲)
この曲は、シセル・シルシェブーという歌手のCDで初めて知りましたが、私はちょっと
土着的で素朴な民謡、旋律の泣いている様な民謡に、弱くて、時折聴いていた曲で
した。昨年から、ごく親しい方、また離れてはいるけれど尊敬していた方、演奏仲間、
...そうした方々が物故されてしまうことが続き、何か「風」とちなんで、そうした方々へ
気持ちを寄せる様な曲を弾いてみたいな、と思うに至りました。編曲の下地になった
のは、勿論この原曲ですが、もうひとつは、最近共演した現代音楽の作曲家からイン
スビレーションを頂いた部分もあります。そして、埼玉のMCでしか言いませんでしたが
実は、この曲はスペシャルゲストに「風鈴」に出て頂きました。この風鈴は、昨年夏に
逝去された利根英法くんの好きだった音色だそうで、彼のご両親から送られてきた
ものです。利根くんは、破竹の勢いで活躍中の箏曲演奏家でしたが、惜しくも...。
風が渦をまいて宙へ駆け上り、天の星になってきらきら輝く...そんな星たちを「風鈴」
に奏でてもらいました。(写真は、亜露麻にて終演後)


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○波間のきらめき(玉木宏樹作曲)
玉木宏樹先生とは、現代邦楽研究所でずいぶんお世話になりました。先生は、長い
ものに巻かれず、独特の鬼才の持ち主でいらっしゃいましたが、今年のお正月に、
ご病気でお亡くなりになりました。私が婚約して玉木姓になったとき、かなり多くの方々
から、玉木先生の息子さんと結婚するの!?と聞かれましたが、真相は全然違います。
そんなこんなもありまして、玉木先生は、名前の上でも、実際のおつきあいの上でも、
親しみ深い方でした。Vnの富田ゆいこさんとも、よく先生の曲を演奏してきましたが、
玉木も先生の作品をとても面白く拝聴していて、今年は是非2人で演奏してみたい
と思い、選曲したのがこの作品です。玉木先生は、非常な読書家で、いつも頭脳が
宇宙の森羅万象に繫がっている様な、ファウスト的な方でした。作られる曲は、小難し
さはなく、とても穏やかなノスタルジックな面もありました。練習の過程で、先生との
思い出がアレコレと蘇り、つくづく楽しい時代を過ごさせて頂いたなぁ、と思います。
(写真は明日館にて、Nさん撮影)

***
こうして粒さに振り返ってみますと、1曲1曲が、音との出会い、人との出会いに彩られ
ていることを実感します。また1年間、あれこれと「月」に想いを膨らませながら、充実
したプログラムを組んでいこうと思います。

ライトの空間で...

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日本での一連のコンサートの中でも、天王山とも言えたのが東京での自由学園
明日館でのコンサートでした。昨年の、やはり暑い盛りの頃だったでしょうか...
2人でライトのお弟子さんのホールがあるから観に行こう、とほんの思いつきで
伺った明日館でしたが、ホールを出る頃にはもうすっかり予約までしておりました。

実は、当日のMCの小話にでもしようか、と思ったのですが、時間も限られていた
ので無しにしましたが、私たちは現在、アメリカに住いしているお家も、フランク・
ロイド・ライトの元で学んだエドウィン・A・ギブソンさんが設計したもので、明日館
を拝見させて頂いた時に、何処となく、今のお家の雰囲気に似ていて、温かく
居心地のいい空間だな、と思ったのでした。こういう所だったら、演奏前の緊張も
大分和らぐのでは...、なんて効果も期待したのですが...??

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いずれにしても、私たちもこうした空間でさせて頂けたのは、本当に幸運でしたし、
お客様からも会場の雰囲気がとても良かった、と嬉しいお声を頂けたのは何より
でした。私たちも演奏前からすでに気にいっておりましたが、来年も、7月6日に
こちらの会場でまたコンサートをさせて頂く予定ですので、来年も是非お運び頂け
ましたら、幸いです。

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最後に、昨年に引き続き、このコンサートを強力にサポートしてくれた洗足音大
の皆さんとの記念撮影。本当に、一生懸命サポートしてくれて、有り難い限り
です。日を改めて、みんなと「もんじゃパーティ」で打ち上げしたのも、また
とっておきの想い出となりました。

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日本では、今年も猛暑が続いているとの知らせが毎日届いております。私も
こちらの「華氏」の感覚に少し慣れてきました。(はじめは、華氏80度と言われて
も何が何やらピンと来なかったのですが...)

今年は、5月の末から日本に帰国し、津々浦々、私たちのデュオとして7公演も
開催させて頂く事が出来、それぞれの地方の土地柄、そこに住まれている方の
お人柄を感じながら、充実したツアーを終えることが出来ました。

逐一、この日記でもアップしていきたい気持ちが常にあったのですが、滞在中
は次から次へと大事な本番が重なり、気がつけば8月です...。時間は本当に
あっという間に流れていくから怖いものです。

アメリカに戻ってからも(私は意図的に、日本に行く時は帰る「go home」、アメリカ
には戻る「return」と言っています。やはり日本は私にとってあらゆる意味で、
"帰る"場所なのです)諸事情あり、シカゴに1週間程滞在していました。ようやく
本当の意味で、アメリカの我が家に落ち着くことが出来たのが、ここ数日のこと
です。

まだ、写真もアップ出来ていなかった静岡公演から振り返っていきたいと思います。

***

静岡では、静岡駅から直ぐの「江崎ホール」でコンサートをさせて頂きました。

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室内楽にぴったりのホール。新幹線に乗ると東京駅からはあっという間ですね。

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お世話になりましたHさんと。玉木を生まれる前から知っているというHさん。
終演後には、極上のお寿司にまで連れていって頂き、感激しました!
静岡の公演にいらしてくださった皆様、ありがとうございました。